※マオレイでなくレイマオです
レイ受派が書くレイマオなので、
普通のラブイチャではありません。
ごめんなさい苦手な人は逃げてください。
俺はマオが嫌いだった。 マオ というのは俺の女房の名だ。 今、濃い桃の髪を揺さぶらせ朝食を作っている女の名だ。 隣家に貰った魚がぱちぱちと焦がされている。 脂が滴り俺の鼻腔に届くといよいよ腹が減った。 それをふと口にすると柔らかい笑みでもう直ぐだと伝えられた。 幼い日、これから告白をされてから幾分経つのか。 今では立派な夫婦となった。 俺とこれは幼馴染という関係にある。 マオの兄、ライとは良く言えば親友で、 何をするのも三人一緒だった。 閉ざされた村では同年の友がいるのは珍しかったのだろう、 周りからも一塊として見られていた。 俺もマオは妹の存在で、 友というよりは兄妹でそこにあり続けた。 ずっとこのままだと思っていた。 だがマオは女だった。 幾ら活発に俺達とつるんでいても、 幾ら勇ましく敵を倒してみても、 まごうことなく女だった。 女というのは美醜に関係なく場を和ませる存在にある。 三人の中のマオは明らかに異質だった。 いや、異質と思っていたのはおのれだけで 傍から見れば一つの固まりだったのだろう。 時が経つとその異質は形を現し始める。 次第に幼子の体は女を纏い始め、 曲線と色香に彩られていった。 それは気付かない振りが出来ないものだった。 しかし俺はこのままが心地良かったので 膨らむ乳房を見ぬ振りをしていた。 俺だけが異質を感じていた。 兄には言いにくいのだろう、 マオはライより俺に相談することが多かった。 ライと喧嘩をしたときや仲直りするとき または怪我をしたときどうすれば気付かれないかと。 そんな些細なことを話しに来た。 俺はいつも相談に応じた。妹だったからだ。 大事な妹の心配を少しでも取り除きたいと 親身になって話を聞いた。 ある日、マオは俺に相談に来た。 相談ではなく、訴えだった。 体が女になっていく、と 初めて兄ではなく自分の事を話した。 異質を感じていたのは俺だけではなく 当事者もそうだということを知った。 体力や体格の差が現れ始め、 俺達が遠く離れていくのだと言った。 女にはなりたくないのだと、 女になるのが怖いのだと泣いた。 マオはそのとき少女だった。 少女の顔でわんわん泣いた。 俺にはどうすることも出来ず、 少女の隣でひっそり泣いた。 どうすることも出来ず、 どうもならなければいいと願った。 しかしそれを壊す出来事があった。 マオに初潮が訪れたのだ。 村では初潮は恵みの神子として盛大に祝われる。 マオも例外ではなく、 村で一番大きな族長の家で宴をした。 出席などしたくはなかったが マオが上目遣いで俺を誘いに来た。 その仕草は幼子の駄々そのものだったが 無意識に艶やかな色を見た。 曲線のマオは柔らかく俺を見上げる。 仕方なく承諾するとマオは花が咲いたように笑ったが 俺には柘榴が破裂したように見えた。 主役のマオはあでやかな着物を纏っていた。 酒を飲み愛想で薄く笑うマオは女だった。 俺は気付きたくなかった。 宴が終わるとマオは俺のところに来た。 あんなに女になることを嫌がっていたのにと 問うてみたら淋しそうに、しかし当たり前のように 仕方ないから と笑った。 それがあってからは、三人で遊ぶことが少なくなった。 少なくとも一ヶ月に五日は俺とライだけで遊んだ。 そのころにはああまたかと諦めも感じ始めたが そのたびに、あの夜のマオの言葉がちらついた。 仕方ない のだ。 髪や爪がのび、 風や川が流れる。 木が花を彩ったなら、 瞬く間に枯れ落ちる。 時の流れを感じながら 俺達は感じることしか出来ない。 マオは大人になっていた。 俺より先に大人だった。 俺はそんなマオとは会いたくなくて いつしか一人を選ぶようになった。 ライとも会わなくなり、隠れて修行をした。 しかし小さな村なので いやおう無く会うことも会った。 そんなときは瞼に幼子の顔を思い浮かべた。 そうしなければ発狂するのだと思った。 普通に接し、普通に別れたつもりだったが それをマオはいつも目ざとく見つけた。 女は酷く敏感だ。煩わしいと思うほどに。 俺の目を覗き込んでは心配そうに口を開閉した。 それはまるで金魚のようだった。 しばらく見つめた後、決まってマオは 元気そうだね と、淋しそうに言った。 俺はマオが嫌いだった。 俺の全てを理解してくれるマオが嫌いだった。 だから仁の誘いに乗って村を出ることにした。 マオも俺も、もう精一杯だったのだ。 柘榴がぐちゃぐちゃになるのも 金魚が水から放り出されて乾くのも 時間の問題だった。 もう限界だったのだ。 だから村とマオを捨てた。 村を出て旅をして、 アアもうこれであんな苦しい思いをしなくていいと思ったのに 会ってしまった戻ってきてしまった。 久しぶりに会ったマオは綺麗になっていた。 綺麗な顔で俺が好きだといった。 所詮、俺とマオは男と女だったのだ。 |
「今日は、また会いましたね。」
膨れゆく乳房が怖いと嘆いた少女はもう居ない。